おもしろきことはよきことなり!(と狸が言っていた)


by yumehito2002
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今まで会った中で最高にダメなネコの話

約10年前のこと。
折からの「国立大学独立法人化」とやらの影響を受けて、大学経営陣の各学部に関する目も厳しくなってきた。
特許や共同研究やで華々しく、稼ぎ頭筆頭である工学部に新しい研究棟が立ち並ぶ一方、
フランス文学やら東洋史学なんぞに明け暮れ、稼がない頭筆頭である文学部は、講義室のエアコン修理さえ危ぶまれる始末。

そんな人間世界の事情がネコ界にも及んだのか、
いつしか工学部キャンパスは生存競争を勝ち抜き、赤い人(分かる人にはわかる大学名物な人)からエサをもらう資格を手に入れた選ばれしネコたちが住み着き、生存競争に敗れたネコたちが文学部キャンパスに流れて来るようになった。

ある適度に曇った夏の日の昼下がり。
文学部キャンパス唯一のカフェの屋外席で、椅子にちんまりと座って300円のランチを食べていた私の視界の隅に、一匹のネコが映りこんだ。
白い体を伏せて、匍匐前進さながらにそろりそろりと進む姿は、どうやら獲物を狙っているらしい。
ネコの忍び寄る先には一本の木(なんの木かは忘れた)。その幹の中程、私の身長ぐらいの高さに、じっと息を潜めた蝉が一匹。

シャケの切り身を口に運ぶのを一時休止して観察モードに入った私を無視して、ネコは一歩一歩、慎重に歩を進める。
身を隠すものもなく幹のただ中に留まった蝉は、相変わらず沈黙を守っている。

あと2メートル。1.5メートル。

1メートルほどに迫った時、ネコはぐっと身をかがめると、一気に蝉に向かって飛びかかった。

一直線に飛ぶ白い影。

空を切る猫パンチ。

蝉がいる地点より遥か下方、顔からべシャッと幹に衝突したネコを尻目に、蝉がジジジと鳴きながら飛んでいった。

漫画みたいだ。

初めて見た。

痛さをこらえるように木の根元に丸まるネコ。
思わず手を伸ばしかけたが、ちょっとまて。
私は今、こいつになんと声をかけるべきであろうか。

しばし考えて、食堂からから揚げ一皿(2個入り100円)を買ってきた私は、「まあ、うん。生きてればそんなこともあるよ。大丈夫、見てないから!」と、口には出さずに目で訴えて、その1個を差し出した。

ネコはバクッと食いつき、大急ぎで平らげると、水を求めてニャーニャー鳴いた。

君。
さっきのハントもそうだが、もっと後先を考えて行動すべきじゃないのかね?

私は水をあげた。

後先計算能力0だった、当時の私にさえ計画的行動の大切さを思わせたネコ。
狩猟能力にも生きざまにも大いに疑問のある彼が、無事生き残っていられたのは、ひとえに彼がネコだからである。

当時、わがゼミ教授のネコ好きは有名であった。
不可が出そうなときは、かわいいネコの写真を献上すれば恩情があると、誠しやかにささやかれていた。

世界はうまくできている。
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by yumehito2002 | 2013-12-05 00:52 | 関東本宅